ここでは企業の財務データなどを見ながら、その企業の株が『買い』か『売り』かを、子どもの視点で勝手きままにトークします。なお、個別企業の株の買いや売りを勧めるものではありません。
前回までは企業の成長性や収益性をいろいろな指標で見てきました。今回は、『株主』からの視点で企業を評価する際に使う指標をいくつか紹介していきます。
新たに企業の株を買うかどうか判断する際に必要になってくる考え方として、『一株あたり○○』というものがあります。
ひとかぶ?
例えば、A社とB社の利益が同じ1億円だったとして、A社の発行済み株式は1株、B社は2株だったとします。今、あなはA社とB社のいずれかの株を1株買うとした場合、どちらの会社の株を買いたいですか?
そうね…A社を1株買った場合は、株主は1人なので利益の取り分は1億円。B社を1株買った場合は、株主は2人なので取り分は半分の5千万円。つまり、A社の株を買うほうが株主の取り分が多くなるので得ということかしら。
正解です、ではもう一問。今、A社株を1株を買うか検討しているとします。A社の前年の利益は1億円で今年は1.2億円に増えました。なお、A社の発行済み株式数は前年は1株、今年は2株でした。みなさんはA社の株を買いますか?
利益増えてるなら、もちろん買いますよ~
ほんと単純ね…私なら買わないわ。確かに利益は増えているけど、1株単位の利益で考えたら前年は1億円で、今年は6千万円と減少している。株主の取り分が減っている株は買いづらいわ。
たしかに!!!減ってる…
そうですね、会社全体の利益は増えている場合でも1株単位で見ると減っている場合は、株主として喜ばしいことではありません。
そうなのか…
以上のように、企業間の比較をしたり、過去と現在を比較したい場合には、1株単位で見たほうがより正確にその企業を分析することができます。そのため、企業分析する際には、会社全体の利益と同時に1株単位でも見ていくことが大切です。
は~い。
では、具体的に見ていきましょう。まずは、先ほどの例にも出てきた「1株あたり利益(EPS:Earnings Per Share)」です。
$$\mathbf{EPS} =\frac{\mathbf{当期純利益}}{\mathbf{発行済株式数}} $$
EPSは1株あたりの利益の大きさを表しており、この値が大きいほど、また、継続的に数字が上昇しているほうが良いとされています。
ずっとEPSが上昇しているのがいいんだね。
EPSが上がるには、利益が増えるか、株式数が減ればいのね。
株式が減る?そなことあるの??
いい点に気づきましたね。実は、企業は自己株式を買うことで1株あたりの利益を上昇させることもあります。企業が株主に利益を還元する手段としては「配当」がよく知られていますが、この自己株買いも代表的な株主還元施策といえます。
自己株買いか~、覚えておこう。
次に紹介するのは、「1株あたりキャッシュフロー(CFPS:Cash Flow Per Share)」です。
$$\mathbf{CFPS}=\frac{\mathbf{営業CF}}{\mathbf{発行済株式数}} $$
キャッシュフローって、なんだ???
キャッシュのフロー、つまり現金の流れ…現金の出入りのことかしら…
「キャッシュ」とは現金や預金などのことで、「キャッシュフロー = キャッシュイン – キャッシュアウト」で求めます。つまり、キャッシュフローがプラスのときは企業のお金は増えていき、マイナスのときはお金は減っています。
そうか、じゃあキャッシュフローがたくさんであれば、企業にお金がたくさん入っているんだね。
キャッシュフローにもいくつか種類がありますが、ここでは特に「営業キャッシュフロー(営業CF)」として話しを進めていきます。つまり、企業の本業の部分のお金の出入りを表すものです。
あれ?でも、さっき見た「利益」じゃダメなの???
先に見た「利益」だけで見ていると、売上が高く、それを積極的に設備投資に回している企業が評価されないという問題点があります。それをカバーするためにこのキャッシュフローから見ていくことも必要となってきます。
3つ目に紹介するのは「1株あたり純資産(BPS:Book value Per Share)」です。
$$\mathbf{BPS}=\frac{\mathbf{純資産}}{\mathbf{発行済株式数}} $$
純資産…またむずかしい言葉が…うぅぅ
純資産はざっくり言うと、①株主が出資したお金と②利益の蓄積(利益剰余金)の合計です。特に配当金は、この利益の蓄積の部分から支払われるので、純資産が年々増えていっている会社は経営が安定して順調であると同時に、配当が増えていくことも期待できます。
配当金はたしかにたくさん欲しい。配当をたくさん貰える企業を探すならこの純資産を見ることが大事なんだね。
さて、『株主』の目線で企業を見るために3つの指標を見てきました。ここで具体的に任天堂を例にこれらの指標を見てみましょう。
任天堂の1株あたりの指標を表示します。
これを見ると、利益が減少している時期には純資産も減っていることがわかるわ。
任天堂は、EPSとCFPSはほぼ同じ動きをしているね。
この3つの指標を経年で見ていくと、企業の変化を敏感に読み取ることができます。ここでは詳細な分析はしませんが、今後、個別企業を分析する際にはこの指標を注意深く見ていきましょう。では、本日はここまでにします。ありがとうございました。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
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