ここでは企業の財務データなどを見ながら、その企業の株が『買い』か『売り』かを、子どもの視点で勝手きままにトークします。なお、個別企業の株の買いや売りを勧めるものではありません。
前回までは売上を見ながら任天堂の「成長性」の観点から会社を見てきました。今回は少し視点を変えて、「収益性」の観点からも見ていきましょう。
しゅうえきせい???
企業にどれだけ稼ぐ力があるか、ということかしら?
どうやって見ればいいんだ…
難しく考える必要はありません。例えば、A社とB社の利益が同じ1億円だったとして、A社の売上は1,000億円でB社が100億円だった場合、どっちの会社がより稼ぐ力があるといえますか?
B社のほうが稼いでる!
そうです。利益が同じであれば、売上の小さなB社のほうがより稼ぐ力があると判断できます。売上に対してどれだけ利益を稼いでいるのか、これは収益力を見る上で一番わかりやすい指標となります。具体的には、「売上高利益率」を使います。
$$ \mathbf{売上高利益率} = \frac{\mathbf{利益}}{\mathbf{売上高}} $$
次は収益を「効率性」の観点から見ていきましょう。
効率的に稼ぐ企業って、どう判断すればいいのかしら…?
「効率」というと少し難しいですが、平たく言えば、会社の持つ資産をどれだけ活用して売上を稼いでいるのかということです。
効率的に売上???
先ほどの例と同じように考えると、A社とB社の売上が同じ100億円だったとして、A社の資産が1,000億円でB社が100億円とした場合、どっちの会社がより資産をうまく使って売上を稼いでいますか?
同じ売上なら、会社の規模が小さいほうが効率的に売上を稼いでいるといえるわ。この場合はB社になるわね。
正解です。売上が同じであれば、会社の規模、つまり会社が持つ資産が小さいほうがより効率的に稼いでると言うことができます。
なるほど~
効率性を測る指標としては「総資産回転率」を使います。
$$ \mathbf{総資産回転率} = \frac{\mathbf{売上高}}{\mathbf{総資産}} $$
さらに「安全性」も見ておきましょう。
「安全」というのは会社が倒産するかどうか、という意味なのかしら?
そうです、簡単にいえば会社が危ないかどうかです。
借金がたくさんの会社とか?
だいたい正解です。会社がお金を調達する場合、基本的には株主の出資を受けるか、銀行などから借り入れることになります。このうち、株主からの出資金は返済する必要はありませんが、借入の場合は返済が必要です。
そうか、前に株主の出資金は返済されないと学んだ気がする。
借入だと金利も払う必要があるから、たしかに借入金が多いと危険性が増すわね。
じゃあ、借金の少ない会社がいいんだね!!!
いえ、必ずしも借金が少ないほうが良いというわけではありません。少し難しい話しになりますが、企業が成長していく際に、借金をすることで成長スピードを加速させることも必要になってくることもあります。大事なのは企業の置かれている状況と資産負債のバランスということになります。
う~ん、むずかしい…
この安全性を測る指標としては「財務レバレッジ」を使います。
$$ \mathbf{財務レバレッジ} = \frac{\mathbf{総資産}}{\mathbf{自己資本}} $$
これまでに収益性、効率性、安全性を測る指標を一つずつ紹介してきましたが、ここでもう一つ「収益性」を測る代表的な指標を紹介します。
さっきの「売上高利益率」ではダメなの???
いえ、売上高利益率も重要ですが、それとは別の観点から収益性を見る指標になります。
別の観点?
「株主」から見た収益性ということになります。
つまり、株主が出資したお金を使ってどれだけ利益を稼いでいるかということかしら?
その通りです。具体的には「自己資本利益率(ROE:Return on Equity)」と呼ばれる指標になります。この指標は、企業分析を行う上で最もポピュラーな指標です。
$$ \mathbf{ROE} = \frac{\mathbf{利益}}{\mathbf{自己資本}} $$
たくさん式が出てきて混乱してきた…
大丈夫です。先ほどのROEとそれまでに見てきた収益性、効率性、安全性のそれぞれ3つの式には以下のような関係がありますので、この関係式から企業の収益性を見ていくとわかりやすいです。
この関係式を使えば、いろいろな企業の収益力を比較することもできるわ。
その通りです。この関係式を使えば企業の収益力を分析することができます。この式からわかることは、売上高利益率、総資産回転率、財務レバレッジのいずれかを高めることで株主が重要視するROEを高めることができるということです。
なるほど~ということは…この式を使えば凄い企業を見つけたい放題だな…ぐふふっ
そんな簡単なわけないと思うけど…
では、具体的に任天堂を例に見てみましょう。
任天堂とライバル企業?のROEを表示します。
ROE(%) | 売上高利益率 | 総資産回転率 | 財務レバレッジ | |
---|---|---|---|---|
任天堂(2019.3) | 14.2 (5.7) |
16.2 (7.5) |
0.72 (0.52) |
1.22 (1.21) |
ソニー(2019.3) | 27.3 (1.4) |
10.6 (0.5) |
0.43 (0.50) |
5.96 (6.10) |
スクエニ(2019.3) | 9.3 (5.1) |
6.8 (3.5) |
1.00 (0.82) |
1.36 (1.51) |
カプコン(2019.3) | 14.4 (9.9) |
12.5 (8.1) |
0.81 (0.83) |
1.43 (1.55) |
どうやって見ればいいんだ…
まずはROEの数値を見るのがいいのかしら?
投資家はROEで企業を評価しますので、まずはROEですね。
そうなると…任天堂のROEは14.2。あっ!!カプコンと同じくらいだ。
任天堂とカプコンの収益力はほぼ同じといえるわね。でも、ソニーと比べると見劣りするわ。
さすがソニー!!やっぱプレステだよな~
ROEはソニーのほうが高いので、株主から見た収益力はソニーのほうが高いといえます。では、その要因を他の3つの指標から読み取ってみましょう。
任天堂のほうがソニーより売上高利益率は高いのに、ROEはソニーより低い…財務レバレッジが関係しているのかな?
財務レバレッジは借入金の大きさを測る指標だったわね。そうなると、ソニーは借金をたくさんすることでROEを高めているということかしら。
借金がたくさん!!ソニーはヤバいのか…
ROEは売上高利益率、総資産回転率、そして財務レバレッジを上げることで高めることができます。ソニーは任天堂より財務レバレッジを高めることでROEが高くなっているともいえます。ただし、これは必ずしも悪いことではありません。
わるくないの???
借金が多いのはそれだけお金が必要…例えば、工場を大きくしたりするとお金が必要になってくる…!!!逆にいえば、借金が多いということはそれだけ商品などの需要が大きくなってるチャンスともいえる。つまり、借金で売上を伸ばし利益も増えればROEも高まるということかしら。
ほぇ~
サキさん、その通りです。たしかに財務レバレッジは安全性の指標で、この値が大き過ぎると危険ではあります。ただし、自社商品の需要が高まり、生産設備の拡大により売上を伸ばすチャンスの時は積極的に借入を増やし生産を拡大することで、結果的にROEを高めることができます。
なるほど、財務レバレッジは単に数字だけ比較してもダメなのか…むずかしい…
任天堂のROEと3つの指標の推移も見ておきましょう。
任天堂のROEと3つの指標の推移を表示します。
ROEと売上高利益率はほとんど同じ動きをするんだね。
任天堂の場合、財務レバレッジや回転率に大きな変化はなく、売上に対する収益力がそのままROEに直結しているのが特徴かしら。まさに販売しているゲームの売れ行き次第というところね。
ROEの推移を見ることで、その企業の現在地とその要因を分析することができます。また、ROEが安定的に上昇していく企業は投資するには魅力的な企業といえますのでそういった企業を探すことが投資で成功する近道かもしれません。
さて、今日はここまでにしましょう。次回はもう少し収益性について別の指標で見ていきたいと思います。ありがとうございました。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
スリープモードに移行します…zzz