ここでは企業の財務データなどを見ながら、その企業の株が『買い』か『売り』かを、子どもの視点で勝手きままにトークします。なお、個別企業の株の買いや売りを勧めるものではありません。
前回は企業の収益力を測る代表的な指標であるROEについて紹介してきました。今回も前回と同様に、収益力を測る指標を新たに2つ紹介します。まず紹介するのは、「総資産利益率(ROA:Return on Asset)」です。一般にROAとも呼ばれています。
$$ \mathbf{ROA} = \frac{\mathbf{利益}}{\mathbf{総資産}} $$
あーるおーえー?あれ、前も似たのがあったような…
ROEと似てるけど少し違うわね。ROEの場合は自己資本で利益を測っていたけど、ROAは会社の資産をベースに収益力を計算しているわ。
そっかー。じゃあ、ROEと似たようなものと覚えておけばいいんだね。
サキさんの言うとおりです。端的に言えば、収益力を株主目線で見るか、または企業の資産で見るかの違いですね。そしてこのことから「利益」の捉え方も少し変わってきます。
利益って、いくつもあるの?
少し細かい話しになりますが、一言で「利益」といってもいくつか種類があります。大きくは以下の5つです。
- 売上総利益(粗利益)
⇒ 売上から売上原価を引く - 営業利益
⇒ 本業で稼いだ利益 - 経常利益
⇒ 本業以外も含めた利益 - 税引き前当期利益
⇒ 一時的な利益も含めた利益 - 当期純利益
⇒ 税金を引いた最終利益
うぅ…むずかしい…
これを全部覚える必要はありません。ここで必要なのは「営業利益」と「当期純利益」だけです。まず、企業が稼いだ利益のうち最終的に投資家である株主のものになる利益のことを「当期純利益(純利益)」と呼びます。そして、前回紹介したROEを計算する際に使うのがこの利益になります。
つまり、この当期純利益を使って、企業は新たな投資をしたり、株主に配当することになるのね。
はい、そのため投資家(株主)にとってこの当期純利益が一番大事であり、ROEを計算する際は必ずこの利益を使うことになります。
じゃあ、ROAはどの利益???
ROAを計算する際には、一般に営業利益や経常利益、当期純利益など複数の利益が使われています。特に決まりはありませんが、ここでは企業が本業で稼いだ利益を表す「営業利益」を使って計算していくことにします。
$$ \mathbf{ROE} = \frac{\mathbf{(当期純)利益}}{\mathbf{自己資本}} $$ $$ \mathbf{ROA} = \frac{\mathbf{(営業)利益}}{\mathbf{総資産}} $$
そして次に紹介する指標は「営業費用売上比率」です。これまで見てきた指標と比べるとさほどメジャーな指標ではありませんが、企業の収益力を測る上で有用な指標と言われています。
$$ \small \mathbf{営業費用売上比率} =\frac{\mathbf{売上}}{\mathbf{営業費用}} $$
売上を費用で割るということは、費用1単位に対してどれだけの売上があるのか測る指標ね。ということは…
???
この営業費用売上比率が高ければ、費用1単位あたりの売上が高いということが言えます。つまり、その企業の商品は価格競争力が強く、安定的に稼いでいく力があると判断できます。逆に、この比率が同業他社と比べて低い場合は、価格競争などに負けて収益が悪化していくこともあります。
この数字が低いと危険なのか…なるほど…
では、具体的に任天堂のROAと営業費用売上比率を見てみましょう。
任天堂のROAと営業費用売上比率を表示します。
ROA(%) | 営業費用売上比率 | |
---|---|---|
任天堂(2019.3) | 15.0(5.5) | 1.26(1.10) |
ソニー(2019.3) | 4.5(1.6) | 1.12(1.04) |
スクエニ(2019.3) | 9.0(7.9) | 1.10(1.10) |
カプコン(2019.3) | 14.6(11.7) | 1.22(1.17) |
これを見ても任天堂は強いな~、カプコンもなかなか。
ROEはソニーの方が任天堂より高い水準だったけれど、ROAは任天堂の方が高いわね。どっちが高い方がいいのかしら?
ROEとROAのどっちが高いほうがいいというのは一概に言えませんが、ROEが高い場合と低い場合、ROAが高い場合と低い場合で4パターンに分けると、それぞれのパターンには以下のような特徴があると考えられます。
- ROE:高 ROA:高
収益性が高く財務レバレッジも有効に活用する、優等生タイプ。 - ROE:高 ROA:低
収益性は高いが負債も大きい、イケイケどんどんタイプ。 - ROE:低 ROA:高
収益性は高くないが負債も少ない、保守的タイプ。 - ROE:低 ROA:低
収益性が低く資産の活用もできていない、迷える子羊タイプ。
てことは、ソニーはイケどんタイプか~
イケどんって…任天堂はどちらかといえば優等生タイプなのかしら。
ROEやROAなどは業種によっても偏りが出てきますが、そうしたことを踏まえながら企業がどんなタイプなのか見ていくとよりその企業の特徴をつかみやすくなります。
さらに任天堂のROAと営業費用売上比率の過去からの推移も見ておきましょう。
任天堂のROAと営業費用売上比率の推移を表示します。
営業費用売上比率が1を下回っている時期があるわね。任天堂もかなり厳しい時期があったということがわかるわ。
でも、任天堂はWiiやSwitchで大復活だね。
任天堂のようなゲーム機を作る企業は、ある程度業績に波があるのは仕方ないことです。これはゲーム開発のサイクルに業績も引っ張られるためで、新しいゲーム機が販売されるまでの期間は開発費用がかさみ、一時的に業績が厳しくなることが多いです。
ゲーム会社は任天堂といえど厳しいのか…
さて、前回と今回の二回に渡って企業の収益力について見てきました。収益力は企業分析をする上で最もコアとなる部分になりますのでしっかりと頭に入れておいてください。
本日はここまでにします。ありがとうございました。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
スリープモードに移行します…zzz